じん肺とは

人間が呼吸する空気の中には、色々な粒子が含まれています。主として小さな土ぼこりや金属の粒などの無機物または鉱物性の粉じんの発 生する環境で仕事をしている方が、その粉じんを長い年月にわたって多量に吸 い込むことで、肺の組織が線維化し、硬くなって弾力性を失ってしまった病気 をじん肺といいます。

じん肺の治療

「じん肺」の本態である肺の繊維化は、肺内に残存する粉塵由来の無機粒子に対する生体の防御反応であって、粒子が存在しつづけるかぎり、緩徐ではあっても慢性的に進行します。この肺の繊維化の慢性進行を食止めることは未だ不可能です。
原因となる粉塵粒子を肺内から洗い出すことは、不可能でありますから、治療は姑息的かつ症状緩和に限られます。
咳止め・ 去痰剤・ 気管支拡張剤の常時服用、風邪および呼吸器急性感染症の予防と早期治療が主たる治療内容です。感染の合併は、治癒寛解の後に、基礎的呼吸機能の低下を招くことが多いので、うがいの励行ならびにマスクの着用などが推奨されます。
感染が生じれば早期に受診し診断して、軽症の内に治療することが必要です。
「肺がん」の合併率は非じん肺例と比較して高いので、禁煙は絶対に必要です。

じん肺の予防

じん肺は、古くから知られている代表的な職業性疾病であるにもかかわらず、じん肺及びじん肺合併症による業務上疾病者数は、依然として多い状況にあります。
このような粉じんによる障害を防止する対策としては、

  • 粉じん発散および粉じんへのばく露を低減する
  • 粉じん作業従事労働者に対する健康管理をする

事が重要であり、それらの対策は、それぞれ粉じん障害防止規則およびじん肺法に規定されています。
また、厚生労働省では、平成15年5月から5ヵ年にわたる「第6次粉じん障害防止総合対策」を策定し、その中で「粉じん障害を防止するため事業者が重点的に講ずべき措置」を示し、粉じん障害防止対策を推進しています。

労災保険について

「じん肺」を発生する恐れのある職場を運営する経営者は、その場所の空気中の粉塵の量を基準値未満に下げる義務と、そこで働く従業員の特別健康診断を実施する義務があります。また、雇用労働者の労災保険掛金を支払う義務もあります。
健康診断の結果でレントゲン写真に標準フイルム1型以上の所見が発見されれば、会社は所轄の労働基準局に届け出て、労働者の「じん肺管理区分」の決定を受けます。
区分は1から4まであり、レントゲン写真で1型以上の「じん肺」が確かに存在し、呼吸機能検査で著しい障害がなければ、管理2となりますが仕事の継続は許されます。
診療(治療)費補助は管理4のみ支給されます。
レントゲン所見と呼吸機能検査結果で、管理3となれば、非粉塵作業への異動を推奨(3-イ)もしくは勧告(3-ロ)されますが、いまだ就労は可能と判断されます。
レントゲン所見で塵肺の粒状陰影が融合した大きな陰影の存在が確かとなり、呼吸機能が著しく損なわれていると判断されれば管理4(就労を中止し、療養に専念すべし。労災保険で医療費は補助し、休業補償としての傷病手当金をも給付する)に認定されます。なお、管理3(あるいは2)であっても、じん肺に高率に合併し、治療によって治り得る合併症(肺結核・ 結核性胸膜炎・ 続発性気胸・ 続発性気管支炎・ 気管支拡張症の、行政上の5合併症)が明らかに存在する場合には、治療の期間のみ管理4相当の労災保険適用(医療費補助・ 傷病手当金給付)があり得ます。
なお、労災保険の適用を受けられるのは、被雇用者(労災保険を掛けられた側)のみであり、部下と同じ業務に就労していても自分には保険金を掛けていない事業主(例えば独り親方)は、雇用者側にあると判断され給付を受けることはできませんが、まれに御自身にも労災保険を掛けておられる社長さんがおり、従業員とともに労災診療を受けておられます。
石綿粉塵曝露が原因の胸膜中皮腫は労災認定されますがじん肺ではありません。
胸膜肥厚班だけで「石綿肺」のない方には毎年2回の検診だけですが無料となります。